結論から言うと、退職金がいくらになるかは「法律で一律に決まっている」わけではなく、会社ごとの退職金規程によって決まります。そのため、正確な金額を知るには自分の会社の規程を確認するのが一番の近道です。一方で、退職金の仕組みや税金の計算ルールは共通しています。この記事では、退職金の全体像、受け取り方の種類、税金の基礎を、転職を考え始めた人向けに分かりやすく整理します。
退職金の仕組みを知ろう
まず押さえておきたいのは、退職金は法律で必ず払わなければならないと決められたものではない、という点です。会社が就業規則や退職金規程で制度を設けている場合に、そのルールに沿って支払われます。つまり「前の会社では出たのに今の会社では出ない」ということがあり得ます。転職を考え始めたら、まず自分の会社に退職金制度があるかどうかを確認しましょう。
退職給付制度の主な種類
会社が用意する退職給付の仕組みは、大きく次の2つに分けられます。
- 退職一時金:退職時にまとめて現金で受け取る方式です。中小企業でも採用が多く、イメージしやすい形です
- 企業年金:会社が積み立てたお金を、退職後に年金のように分割して受け取る方式です。確定給付企業年金や企業型確定拠出年金(企業型DC)などが代表的です
会社によっては、この2つを組み合わせている場合もあります。自分がどの制度に入っているかは、就業規則や社内ポータル、人事部門への確認で分かります。
退職金の計算方法は会社ごとに決まっている
退職金の計算方法に全国共通の公式はありません。代表的な決め方としては、退職時の基本給に勤続年数に応じた係数を掛ける方式や、勤続年数ごとに決められた金額を積み上げる方式、給与とは切り離してポイントを貯める方式などがあります。いずれも土台になるのは自社の退職金規程です。
金額に影響する代表的な要素は次の2つです。
- 勤続年数:長く勤めるほど金額が大きくなる設計が一般的です。特に勤続が短いうちは金額が小さいことが多く、「思ったより少ない」と感じやすい部分です
- 退職理由:転職など自分の都合で辞める「自己都合退職」は、会社の都合で辞める「会社都合退職」より金額が低く設定されている規程が一般的です
転職先を決める前に退職金の見込み額を知りたい場合は、退職金規程で計算してみるか、人事部門に試算を依頼できるか確認してみましょう。大まかな金額でも分かると、転職後の生活費や、次の仕事までのつなぎ資金を計画しやすくなります。
受け取り方は3パターン
退職金の受け取り方には、主に次の3パターンがあります。制度によっては選べない場合もあるため、規程の確認が必要です。
- 一時金で受け取る:退職時にまとまった金額が入るため、転職活動中の生活費や引っ越し費用などに充てやすい形です
- 年金で受け取る:退職後に期間を決めて分割で受け取ります。長期間にわたって受け取れる安心感があります
- 一時金と年金の併用:半分を一時金、残りを年金といった組み合わせができる制度もあります
なお、企業型DC(企業型確定拠出年金)のように、積み立てた資産を新しい会社の制度やiDeCoに移す手続きが必要な制度もあります。退職時に会社から案内される書類は、内容を確認して期限内に手続きしましょう。
退職金にかかる税金の基礎
退職金を一時金で受け取る場合、その収入は「退職所得」として扱われ、給与とは別の枠で税金が計算される「分離課税」という仕組みになっています。退職所得は、長く勤めたことへのねぎらいという性質から、税金の負担が軽くなるよう配慮された計算方法が用意されています。
退職所得控除:勤続年数が長いほど大きい
退職所得の計算では、まず収入から「退職所得控除」を差し引きます。現行制度では、控除額の計算式は次のとおりです。
- 勤続年数が20年以下:40万円 × 勤続年数(計算結果が80万円未満の場合は80万円)
- 勤続年数が20年を超える:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)
勤続年数は1年未満を切り上げて計算するのが原則です。たとえば勤続10年なら控除額は400万円、勤続25年なら800万円+70万円×5年=1,150万円となります。
課税される金額はさらに半分になる
税金がかかる対象となる退職所得の金額は、次の式で計算します。
- 退職所得 =(退職金の収入金額 − 退職所得控除額)× 1/2
つまり、控除を差し引いた残りの半分だけが課税対象です。この退職所得に所得税と住民税がかかります。退職金が退職所得控除の範囲内に収まれば、原則として税金はかかりません。
「退職所得の受給に関する申告書」を忘れずに
退職金を受け取る前に、会社へ「退職所得の受給に関する申告書」を提出しておくことが大切です。この申告書を提出していれば、会社が正しい税額を計算して差し引いたうえで退職金を支払ってくれます。提出していない場合は、支給額の20.42%が一律に源泉徴収(先に差し引かれること)されてしまいます。本来の税額より多く引かれていることが多いため、その場合は翌年に確定申告をすることで払い過ぎた分が精算され、還付を受けられます。申告書の提出は会社の案内に従い、期限に遅れないよう注意しましょう。
なお、この記事で紹介した数値や計算式は、現行の一般的な制度に基づくものです。税制は改正されることがあるため、実際に受け取る際は国税庁などの公式案内で最新情報を確認してください。また、最終的に優先されるのは自社の退職金規程です。
まとめ:まず自社の規程確認から
退職金のポイントを振り返ります。金額は法律ではなく自社の退職金規程で決まります。勤続年数と自己都合か会社都合かで金額は変わり、受け取り方は一時金・年金・併用があります。税金は退職所得控除と「半分だけが課税対象」という仕組みで軽く済む設計ですが、「退職所得の受給に関する申告書」の提出を忘れると多めに源泉徴収されるため、確定申告での精算が必要になります。
次の一歩としておすすめなのは、就業規則や退職金規程を一度開いてみることです。自分の制度の種類と、自己都合退職の場合の計算ルールが分かるだけでも、転職の計画はぐっと立てやすくなります。


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